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山で遭難しても、私は決してきのこは食べない【岡山ひろみ】

こんにちは!町民ライターの岡山ひろみです。つい最近まで夏だった気がしたのに、今はもう朝起きるとストーブをつけるようになりました。赤や黄色に色が変わる木々を窓から見ながら、もうすぐ終わってしまうだろう秋を楽しんでいます。読書の秋、食欲の秋、芸術の秋…みなさんは、どんな秋を過ごしていますか?私は…きのこの秋!

「遭難したときに食料を探すなら、きのこは避けるべきだ。見つかりにくいし、毒きのこが多いし、カロリーも低いからコスパが悪すぎる」と、誰かに言われたことがあります。なるほどな…と思ったのは、10月16日に萠和山森林公園で行われた、きのこ講習会での出来事です。

大樹町には、大樹町消費者協会という組織があります。北海道内の66地域にある消費者協会のひとつで、誰もが安全安心に暮らせる社会づくりを目指して、様々な活動をしているそうです。大樹町消費者協会では、消費者と地域のつながりを深めるため、食育活動の一環として牛乳を使った料理講習会や北海道米料理講習会、そしてきのこ講習会を行っているそうです。町の広報誌に挟まっていたきのこ講習会のチラシを見て、面白そう!と思った私は、すぐに申し込みました。

調べてみると、大樹町でのきのこ講習会は過去に何度か行われているようでした。過去には、山できのこを採取したり、室内で座学があったり、きのこ汁を堪能したり…と、なんとも魅力的なプログラムが組まれていたようでした。しかし昨年は、新型コロナウイルスを考慮して中止、今年も室内での座学は避けて屋外での採取を中心としたプログラムとなっていました。

朝9時に、萠和山森林公園の入口に集合です。天気は曇り、気温は12度ほど。参加費500円を支払うと、きのこ採集セットを貸してくれました。講師は、NPO法人藻岩山きのこ観察会の中田洋子理事長。はるばる札幌から来てくださいました。参加者全員が揃うと、2時間かけて自由にきのこを採る時間がスタートです!

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スタート!と言っても、どうやってきのこを探すのでしょうか。道端に偶然生えているきのこを見つけたことはありますが、私、意思を持ってきのこを探すのは初めてです。どんなきのこがあるのかも分からず、とりあえず木の根っこを探してみます。ありません。

そんな中、講師の中田先生が、参加者に対して説明をはじめました。瓦のように重なって、たくさんのきのこが連なって生えています。

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これらは腐生性のきのこで「腐生菌」といい、落葉や倒木など森で生産される有機物を分解して栄養をとる生き方をしています。この腐生性のきのこが落葉や倒木の分解をより早め、人が森の中を歩けるような状態にしてくれます。

木の幹や枝を分解するのは「木材腐朽菌」のシイタケやナメコ、落ち葉などを分解する「落葉分解菌」があり(農林水産省ホームページより)、モリノカレバタケが代表的な落葉分解菌のきのこです。

腐生菌の他にも、生きた植物と共生関係を築いている「菌根菌」と呼ばれるきのこもあります。マツタケのように木の根に菌根を作り、木から光合成で作られた糖類をもらい、カリウムなどの無機養分を木にあげる生き方です。腐生菌は朽ちた木や葉を分解し土に返す役割を、菌根菌はより木を元気にする役割を持っているんですね。「きのこは必ず森林の中で役割を持っています。役割を果たさないきのこはありません」と中田先生もおっしゃっていました。

それまで私は「ジメジメしていると生えてくるもの」としか思っていなかったので、きのこに対する見る目がガラリと変わりました。

気合を入れ直し、きのこを探すこと30分。落ち葉の中を歩いていると…ありました!!!!

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初きのこ採取です…!!

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裏がスポンジのようになっています!こんなきのこがあるんですね…これはヤマイグチというきのこで、かなり古くなって腐りかけている状態のもののようです。落ち葉の間にたくさんあるかもしれないことに気がついた私は、一生懸命目を凝らしました。すると…ちらほら見つかり始めます。

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参加者の中にきのこに詳しい方がおり、これはホコリダケだと教えてもらいました。突っついたり踏んだりすると、胞子が埃のように舞うからです。写真だとわかりにくいですが、中央にあるきのこの周りにモヤがかかっているように見えませんか?それが胞子です!その方曰く、町中にも生えているそうです。全然知りませんでした。

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連なって生えるきのこ、木に生えるきのこ、いろいろな種類があることが分かりましたが…落ち葉と色が似ていて見つけるのに苦労します。

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例えば上の写真の中に、大きなヤマイグチが1つだけ生えているのですが、どこにあるか分かりますか?見つけるまでスクロールしちゃだめですよ…!!


正解は…





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こちら!一度判別してしまえば見分けがつくものの、そう簡単に見つけることはできません。この写真の中で私が見つけたのは1つですが、もしかしたら他のきのこも生えているかもしれませんね。

結局、2時間かけて私が採取できたきのこは8種類だけ!そのうち食べられるものを講師に聞いたところ…1つもありませんでした。「食べられない」というのは、すなわち毒きのこである、というわけでもないそうです。例えば私が採ったヤマイグチは、古くなって腐りかけているため、食べられないそう。

主婦の友社出版の『見分け方がよくわかる!おいしいきのこ 毒きのこ』(
大作晃一・吹春俊光/著)という本には、「古いものはカビやバクテリアが繁殖していて中毒の原因になるかもしれません」という記載がありました。自然のきのこを採取して食べようと思うのであれば、種類だけではなく古くなっていないかどうかもチェックする必要がありますね。

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あとできのこ図鑑3冊を読み比べて分かりましたが、きのこの食毒は「食用」と「毒」だけではなく、「食べられるけど美味しくない」「人によっては食べられたり中毒になったりする」「毒があるか分からない」「食べられるか分からない」などといった分類がありました。
食毒の分類は研究者や有識者によって見解が分かれる部分があるようですが、例えば、札幌市が配布している『野や山のきのこハンドブック』では、「食用不適きのこ」を以下のように定めており、食べないように呼びかけています。

 1.類似種に区別しにくい毒きのこがあるきのこ
 2.食べ合わせにより中毒を起こすきのこ
 3.消化不良を起こしやすいきのこ

この世の中に存在しているきのこの多くは名前がなく、食毒不明です。未知のきのこがどれくらいあるかというと、名前があり食毒が明確なきのこの2〜3倍だそうです。そう考えると、自然に生えているきのこを安易に口に入れるのは非常に危険な行為ですよね。中田先生も「一気に覚えるのは難しいので、長い時間をかけて一つずつ確実に覚えることが大事」とおっしゃっていました。

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突っつくとカサの先端にある孔から胞子を飛ばすホコリタケですが、それは成熟した証。生まれたばかりのホコリタケは白色で、成長するにつれて黄褐色になり、球形の頭部の中に胞子を作るようです。別名は、キツネノチャブクロともいうそうです。

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こうやって分類していくと、本当にたくさんの種類があることが分かります。自然のきのこはたくさん亜種もあるため、中田先生でも見分けがつかないものがありました。中田先生は何度も「なんでも食べない!怪しいと思ったら食べない!」とおっしゃっていました。

最後に、美味しいきのこと、その食べ方を教わりました。自然のきのこは虫がたくさんいるため、5分ほど濃いめの塩水に浸けて虫出しするのが良いそうです。

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約20名の参加者全員で採取したきのこは、これだけの種類になりました。2時間かけて見つけても半分以上が食べられない…中田先生ですら判別できない種類がある…そして、食べるときは濃い塩水に浸けて虫出しをする…よくわかりました。私はきのこ素人なので、やっぱり遭難して食料を探すことになっても、きのこは探さないことにします。でも、先生のようにきのこを勉強して自然のきのこを食べるのも、楽しいだろうなぁ!

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