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道の駅コスモール大樹にある本をブックレビューしてみた。【長谷川彩】

みなさん、こんにちは。
町民ライターの長谷川です。

いよいよ晩秋と呼ばれる季節も終わりを迎えつつあり、本格的な冬の到来がすぐそこまで迫ってきました。私にとっては二度目の冬。今シーズンはちょっと調子に乗って、12月も遠出の予定を入れたりしています。

どなたも興味がないかと思いますが、私の近況をお話ししますね。

今年の夏頃、ひょんなことから(本当にこれを「ひょん」と言わずに何という、という「ひょん」だったのです)完全なる趣味で韓国語の勉強を始め、先週末は検定試験を受けに札幌まで行ってきました。

「原稿が滞っている」ことを十二分に理解しつつ、試験が終わるまで一切の仕事を先延ばしにすると決め(ダメな人です)、気づけば大樹町noteも締切2日前まで白紙の状態。この時点で、どこかへ取材に行ったり、どなたかにインタビューできるはずもなく、私が何の前情報もなく書けることといえば「本」のことだけです。

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と、いうことで多少の横着さはありますが、今回は4月に道の駅コスモール大樹に設置した「まちなかライブラリー」の中から厳選した9冊をピックアップし、レビューを書いてみようと思います。ますます本に興味をもち、大樹町にお住まいの方でしたら「今度行って手にとってみようかしら」くらいには思ってもらえそうな記事を目指します。はい。

個人的には、いつも真面目くさった記事か、童話のようなこじゃれた文章しか書けていないので、ウィットに富んだ文体を使ってみようと思います(ハードルが上がりましたね)。

ところで、私がなぜ本の仕事をしているのか。どのような思いで大樹町内に「まちなかライブラリー」を作ったのかは、以前書いた記事をお読みいただければと思います。ありがたいことに、ラノベっぽいタイトルが功を奏したのか、たくさんの方に読んでいただき、初対面の方から「あの記事読みました、とても良かったです」と、お言葉を頂くこともあり、作家気分を味わうこともできました。感謝しています。

前段が長すぎましたが、いよいよ本の紹介に入ります。なお、当ライブラリーは「食べるをより深く」「宇宙にいちばん近い町」「北海道を楽しむ」という3つのカテゴリーに分かれています。それぞれのカテゴリーから3冊ずつを選抜しました。

「食べるをより深く」部門

その1
『毎日、牛まみれ』 牛川いぬお 著(KADOKAWA)

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農業漫画といえば荒川弘先生の『百姓貴族』や横山裕二先生の『十勝ひとりぼっち農園』などが十勝ではよくみられるので、私はいつも違う本を選んでいます。著者は、たまたまテレビで闘牛の映像を見たことをきっかけに、牛に魅せられ、酪農の道を選んだ牛山いぬおさん。決して容易いものではない酪農という仕事に、朗らかに向き合っています。さらには、牛をよく観察し、愛をもって接している。経済動物として私たちの血肉になることを受け止めながら。

この本については、以前きちんとした感想文を書いているのでした。ぜひこちらも合わせてお読みください。

その2
『北海道の魚類 全種図鑑』 
尼岡邦夫・仲谷一宏・矢部衞 著 (北海道新聞社)

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正直に申し上げまして、私は魚介類があまり食べられません(余談ですが、メロンも好きではありません)。美味しい海産物がたくさんとれる大樹町に住んでいるのに、もったいないというか、詰んでいますよね。ゆえに、魚の種類もよく分かりません。切り身でなければ鮭も判別できないし、カレイとか、マンボウとか、わかりやす色カタチのものしか分からないのです。ひどいですね。

そんな私ですから、魚の本を紹介することに関しては説得力に欠けるのですが、この本は魚を愛する全道民がもっていて損はありません。北海道の海・川・湖沼でみられる全823種の魚類が網羅されているのですから。私は、この本を見ても「ペリカンアンコウ怖いぃ……(P178)」「サケビクニンの尾びれ小さすぎやないか?(P369)」という最底辺の感想しか持てないのですが、この本をつくるのにどれだけの労苦があったかは、最底辺の編集者としてよく分かります。著者である3名の博士と、北海道の本に関しては右に出る者(出版社)はおそらくいない北海道新聞社へ尊敬の気持ちを送りたいと思う本です。

その3
『知っておいしい肉事典』 実業之日本社 編(実業之日本社)

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正直に申し上げまして(2回目)、私は肉が好きですが、部位の名称はまるっきり分かりません。カルビもハラミもロースも分かりません。分かるのは、モモ肉がモモの肉、胸肉が胸の肉、少し難しいところでタンが舌ということくらいです。本当に色々な方から怒られてしまいますね。食べることに興味がないわけでは決してないはずなのですが。ちなみに高校生までは、キャベツとレタスの区別もつかずバイト先で呆れられていました。

そんな私がよく参考にしているのがこの『知っておいしい肉事典』。それぞれの部位ごとの特徴や美味しいレシピとともに、安全に食すための知識までが網羅されています。前に勤めていた本の会社でも、この本はよく利用していました。

編集者的な観点からいえば、新鮮な状態で肉をブツ撮りするのは、スピードが命のだったでしょう、ということ。腕の良いカメラマンさんに違いありません。、そんなところにも注目すると、1冊の本が味わい深くなりませんか。

「宇宙にいちばん近い町」部門

その4
『宇宙』 かこさとし 著(福音館書店)

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宇宙の果てしなさを説明するために、この絵本はまず「ノミのジャンプ」からスタートします。その後、人間や動物の飛距離、世界的な建築物の高さや、乗りものの速さに言及し、だんだんと地球からズームアウトしてゆくのですが、私たちはページをめくるごとに、私たちの小ささと、宇宙の広さを実感します。

科学をただ「識る」のではなく、感動を得ながら「理解する」ことができるようになっているのです。

今から40年以上前に描かれた絵本ですが、宇宙史が更新され続ける今も、新鮮な気持ちで読むことができます。そんな絵本は、なかなかありません。これでもか、と米粒のように小さな絵に対しても、ひとつひとつに丁寧な説明が付してあります。子どもに対しても「容赦がない」。かこさとしさんの真骨頂です。

その5
『138億光年 宇宙の旅』 渡部潤一 監修 岡本典明 執筆(クレヴィス)

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Twitterでときどき見かける(=たびたびバズっている)画像に90年代に撮影された冥王星の写真と、最新の写真を比較したものがあります。目視でピクセルが判別できるほどの解像度しかないモノクロのビットマップ画像は、たった20年で表面の凹凸やそれにともなう明暗までもが鮮明に映し出される画像へと、とんでもない進化を遂げました。

本書は、2018年に創立60周年を迎えたNASA(アメリカ航空宇宙局)が所蔵するアーカイブのなかから圧倒的に美しい天体や銀河の姿を厳選した写真集。ゴッホが描いた「星月夜」のようにうねる木星にかかる雲。どこか美しいクラシックのような旋律を感じさせる土星のリング。あらゆる色と光を内包し、放出しながら広がっていく銀河……。改めて宇宙は美しい。美しいのにミステリアス。「もっとあなたのことを知りたい」と思う艶かしさが宇宙にはあるように思います。

その6
『宙の名前 新訂版』 林完次 著(角川書店)

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日本語の豊かさを語るときに、しばしば「自然に関することばの多さ」が引き合いに出されます。はたして月と星、夜空にまつわる単語はどうでしょう。

満月が終わった十六夜の異称「既望(きぼう)」、夜が更けいり明け方近くになること「暁降(あかつきくだち)」、星の光のおぼろなこと「星の紛れ(ほしのまぎれ)」…これらの言葉を口ずさむとき、自分のなかに日本人の「血」みたいなものを感じます。その言葉に対して、郷愁のようなものを感じるのです。今はもうほとんど忘れ去られてしまった良き時代の、風情や情緒といったものを思い出すのでしょうか。

後半は、春夏秋冬の星座の名前が並びます。小さな星と大きな星。点と点を見えない線で結びながら、そこに物語を描いた古代の人びとの想像力に酔いしれてしまいます。

「北海道をたのしむ」部門

その7
『クマと少年』 あべ弘士 著(ブロンズ新社)

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著者は旭山動物園の元園長あべ弘士さん。アイヌの熊送り(イオマンテ)の儀式をベースにしたクマと少年の物語です。

友情や兄弟愛という言葉で形容することはあまりに陳腐。この物語を読むとき、アイヌの人びとにとっての、人と動物、そして神様という3つの存在はどのように影響し合っていたのだろうということを考えます。そこには支配する/されるという主従の関係ではなく、守り/守られるという穏やかな協調の関係があったのではないか。大切なものを守るとき、命までを差し出す愛のかたち。これはもう、物語の世界でしか味わえないものです。

その8
『神さまたちの遊ぶ庭』 宮下奈都 著(光文社)

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『羊と鋼の森』などの著作で知られる作家の宮下奈都さん。トムラウシ山ふもとのほど近く、道内でも特に雪深い、小さな小さな集落に家族で引っ越し、1年間の山村留学を経験しました。一番近いスーパーまで37km、テレビは難視聴地域で、大手携帯キャリア3社もほぼ圏外(当時)。想像を絶する「山村」で、不自由さもまるっと味わいながら豊かな暮らしを実践できたのはひとえに宮下一家の朗らかさにあったといってもいいでしょう。ところどころユーモアとウィットに富んだ軽快なエッセイは、読んでいるとこちらの身まで軽くなっていく。この本についてもずいぶん前にエッセイを書いているので、おヒマな方はぜひ読まれたし。

その9『水曜日のおじさんたち』
鈴井貴之・藤村忠寿・嬉野雅道 著(KADOKAWA)

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私を北海道にいざなった元凶(?)であるおじさんたちの物語。高校生のときに友人Kに「はせちゃん絶対好きだから」とそそのかされ、DVDを借り、見事にハマり、卒業旅行で真冬の北海道に行き、北海道自体にハマったことがすべての始まりでした。このおじさんたちがいなければ、私は絶対に北海道へは来ていなかったんです。

しかし、このおじさんたちの「変わらなさ」ったらないでしょう。それぞれが年齢を重ね、世間的には「エライ人」の座に君臨し、渋みとダンディズムが激増し(特にミスターは色気がすごいと私は思う)、それでいてガハハハハと豪快に笑い、グチとゴネが止まず、カメラの前で酔っ払い、相撲をとる。パスポートさえもテレビ局預かりで、どこにいくにも内緒にされていたメインの彼は今回不在ですが、とにかく3人が年相応にゆるゆると美味しいものを食べ、温泉でゆっくりして、思い出の地を巡るのを眺めているだけで、心が和むのです。ただのおじさんなのにね。

まとめ


いかがでしたでしょうか。

こんなに自由に文章を書いたのは久しぶりです。もしも、このブックレビュー(のようなもの)を読んで「この本読んでみたいな」と思ってくださったのなら、ぜひ道の駅コスモール大樹に足を運んでみてください。

4月に設置をして以来、「購入できないのか」といったお問い合わせも頂いているそうで、どうにかその場で購入できる仕組みを整えられればいいなとも思っています。

町内にお住まいでしたら、私はたまの週末に出張本屋などもやっておりますので、ご注文いただき、お届けも可能です。インスタグラムで「月のうらがわ書店」をフォローしていただくか(@tsukimitaini)、メールにてお問い合わせください。

(と、この文章を読んでいるかたは、スマホやPCを日常的に利用している世代だと思うので、Amazon等で簡単に購入できてしまいますよね)

それでは、次回の更新もお楽しみに。



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