【歴舟川清流まつり・ペルプネ火祭り】柱松明(たいまつ)の作り方
こんにちは!大樹町地域おこし協力隊の宮田です。
皆さんは、大樹町の夏のお祭り、歴舟川清流まつりで開催される「ペルプネ火祭り」を見たことがありますか?
巨大な柱松明を燃やして、倒れた方向でその年の豊作・豊漁を占う、大迫力のお祭りです。
この柱松明は、大樹町の労働者団体(大樹地区連合)、技能者会をはじめ、町の多くの事業者の方々の力を結集して作られています。しかし、作り方が口頭でしか伝わっていないため、このままではいつか作り方を知っている人がいなくなってしまうのでは?と思い、柱松明作りを指導してくださっている菅敏範さんにお話を聞き、さらに今年の柱松明作りを取材して、柱松明の作り方をまとめてみました。
こちらを読んで、ペルプネ火祭りに興味を持っていただけると嬉しいです!
ペルプネ火祭りとは?
1990年頃、大樹町観光協会役員が現石川県七尾市能登島向田町の「向田の火祭」を見学し、大樹町の歴舟川清流まつりに取り入れることにした、というのが始まり。
大樹町のペルプネ火祭りでは、柱松明が山側に倒れると豊作に、海側に倒れると豊漁になる、と言われています。(ちょうど真ん中に倒れた場合は豊作・豊漁両方)
柱松明の高さは約20m、柱の周囲にはトドマツの枝を巻き付け、柱のてっぺんには「御幣」を巻きます。かつては縁起物の5円玉も柱のてっぺんに付け、倒れた後には参加者による争奪戦になっていましたが、危険なため中止されました。
始まった当初は適当な広場がなく、河原の砂利で実施したそうですが、足元が不安定で、増水の危険もあったため、現在の河川敷へ移動しました。
ペルプネ火祭りの儀式
採火
① 大樹神社の境内で採火式を行い、代表者が「火おこし」を行う。
②「神の火」は神輿に乗せられ、若衆に担がれて祭り会場まで運ばれる。
祭り会場にて
① 会場に到着した神輿は、柱松明の周りを3周まわる。(始まった当初は7周半でしたが、時間がかかるため徐々に減らされました。)
②「神の火」は会場の4か所のかがり火に移される。
③ 約100名の子供たちが持つ手松明に火が移され、みんなで柱松明の周りを約2周歩く。
④ 火のついた手松明を柱松明の根元に静かに置く。
⑤ 手松明の火が柱松明に燃え移り、燃え上がる。
ペルプネ火祭りは、北海道内では唯一の「柱松明」を使った大迫力のお祭りです。
柱松明作り~準備編~
本柱、支柱を選ぶ
本柱:カラマツの生立木で、直径40㎝以上の通直で芯腐れのないものを選ぶ。(芯腐れがあると、立ち上げの際折れる可能性がある。)長さは18m程度で、先端の太さは約20㎝以上のものが良い。
支柱:長さ15m、太さ約30㎝程度のものを3本使用する。本柱の高さ約10m地点で、三方向から本柱を支える。
枝の採取、選別
トドマツの枝であれば問題ないが、作業の効率を考えると、できれば樹齢の若い、枯れて茶色になったり汚れたりしていないものを使用する。
灯油と爆竹の準備
1.灯油入りペットボトルの準備
500mlペットボトルに灯油を入れたものを70~80本用意し、首に針金(20番)を取り付ける。
→ペットボトルの底が焼けて抜け、零れ落ちた灯油でたいまつの火力を増すため
2.爆竹の準備
爆竹を40~50箱用意し、5個ずつポリ袋に入れて縛る。
→爆竹の弾ける音で迫力を増すため
柱松明作り~枝巻き作業編~
枝束作り
① 枝巻(柱松明に巻き付ける)に使用できる良質な枝と、できない枝に分け、使用できる枝は長さごとに3種類に分ける。長すぎる場合は切断する。
大:長さ70~80㎝ 中:長さ50~70㎝ 小:長さ50㎝以下
② 使用する枝は、根元を切って鋭利な枝先を丸くする。
③ それぞれの長さの枝を5~6本合わせ、根元から約15㎝のところを2重にした針金できつく束ねる。全部で約300束作る。
④ 束ねた枝を大きさごとに分けて山にしておく。※混ざってしまうとちょうど良い大きさの枝を探すのが大変。
⑤本柱の立ち上げ後に使用する、形の良い枝束を40~50束(サイズ:できれば大、なければ中でも良い)、作業の支障にならない場所によけておく。
よけた40~50束については、高所作業車で釣り上げるため、クレーンの爪が引っかかる程度の大きな輪を針金で作っておく。
※利用できない枝については、柱松明の根元のスカート部分に使用するので、柱松明から離れた場所に積み上げておく。
枝巻き作業
1.本柱の③と⑤の周囲に、青竹4~5本を針金(14番)で巻く。
→青竹の節の中の空気が熱で傍聴して弾ける効果音のため
2.下方部(③)の枝巻き作業 1周目
②のスカート部分3mを空けたところから上に向かって枝巻き開始。
本柱の③の部分の周囲に束ねた枝5~6束(サイズ:大)を合わせ、枝束の根元から15~20㎝の部分を二重にした焼き番線で縛り、シノ等で強く締める。
2段目の巻き付けは、1段目で巻いた枝の番線部分まで枝先を被せて、1段目と同じ要領で縛る。
同じ要領で、③部分をすべて枝で覆う。
巻いた枝の束が滑り落ちないように、本柱に五寸釘を打って、針金の余った部分を引っかけて吊る。
3.上方部(⑤)の枝巻き作業【1周目】
③と同じ要領で、本柱の⑤の部分の枝巻きを行う。本柱が徐々に細くなるので、枝の束はサイズ中を中心に使用し、先の方にはサイズ小の枝の束を使用する。
柱の先端部分1.5m(⑥)には、本柱の上部に伸ばす青竹7本をセットしてから枝巻きし、番線で締めるときには竹を割らないように注意する。
4.灯油入りペットボトルの取り付け
灯油入りのペットボトルを針金や枝に、満遍なく取り付ける。方向は縦向き。(本柱を立てた際にペットボトルの底が下に来るように)
5.枝巻き作業(③⑤両方) 2周目
1周目で巻いた枝束と段違いになるように巻き、針金で縛るときにはペットボトルをつぶさないように気を付ける。
ポイントは、1周目の枝束の隙間を埋めるように巻くこと。分厚くしても燃え残るので、整理するような感覚で巻く。
本柱最上部の2周目はサイズ小の枝束を使用し、方向を互い違いにして巻き付ける。(見た目を整えるため)
6.爆竹の取り付け
立ち上げる直前に、巻き付けた枝の中に隠すように取り付ける。
柱松明作り~立ち上げ作業~
1.本柱の先端に伸ばした青竹の先に布(御幣)を巻く
2.本柱の立ち上げ
3.支柱を立てる
4.残りの部分の枝巻き作業
立ち上げ後に使用するためよけておいた枝束(サイズ:中または大)を渡して枝巻きしてもらう
5.スカートの取り付け
6.スカートを布で巻き、その上に余った枝をかぶせる
7.完成!
※火祭り直前に本柱・スカート部分に灯油をかける
歴舟川に関する豆知識
歴舟川は、日高山脈の「コイカクシュサツナイ岳」を源とし、大樹町の真ん中を通って太平洋にそそぐ全長64.7㎞の川です。川の始まりから終わりまで、大樹町内だけを流れます。今でも少しですが砂金が採れる、砂金掘りスポットとしても有名です。
歴舟川は環境省の水質調査で、昭和63年から平成2年まで3年連続で清流日本一に選ばれました。平成3年には一度ランク落ちしましたが平成4年には再び日本一に返り咲き、その後、令和3年までに通算18回日本一に輝きました。
歴舟川が清流日本一と評価されたことから、大樹町観光協会の主催で、平成元年から毎年8月に「歴舟川清流まつり」が行われています。かつては手作りのいかだやカヌーで歴舟川を下るイベントや、砂金掘り大会なども開催されていました。
長い清流まつりの歴史の中でも、いつでも清流まつりの目玉で最大の催し物だったのが、花火大会とペルプネ火祭りです。
最後に
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
柱松明作りには今年から一般の方にも参加していただけるようになりました。来年も引き続き一般参加を募集する予定ですので、柱松明作りに参加したい!と思った方は、ぜひ一緒に柱松明を作って、歴舟川清流まつりを盛り上げましょう!