【ワーキングステイ住宅】作家滞在レポート#02
こんにちは!北海道十勝・大樹町協力隊、移住担当のおおばです。
大樹町のよさを伝えたい!そのためにはまず町に足を運んで実際に生活をして欲しい・・・移住担当としてはそのためにどうすればいいか?を考える日々なのです。
今回は画家である私の強みを生かした、クリエイティブ方面からなにか企画できないか考え、「作家合宿」を行うことにしました!
「滞在制作(AIR)」ではなく「合宿」にしたのは、あくまでも「地方で”作家として生活”する」のを体験してもらいたいため。なので、作品制作や町内での発表は必須にはしませんでした。
私のインスタグラムで「地方での制作に興味のある作家」を募集したところ10名ほどの作家が手を挙げてくれて、その中から3名が、2024年5月14日~20日まで大樹町に滞在して取材(リサーチ)や制作をしてくれました!
そのときの滞在レポートが届きましたのでお届けしたいと思います。
今回は第2弾で「加賀谷真秀」さんです。
この度は以前からアーティスト仲間であり、現在大樹町に移住して地域おこし協力隊をしている おおばさくら さんに「大樹町で作家合宿をしてみませんか?」とのお誘いをいただき1週間ワーキングステイ住宅に初めましての2人のアーティスト(鳥本さんと関戸さん)と共に滞在しました。
今回大樹町に滞在するにあたって、私は東京で開催する自身の個展前ということもあって「広いところでリフレッシュしながら制作できたらいいな〜」くらいで前知識もなにもなく町へやってきました。
初日・2日目(5/14.15)
協力隊のおおばさんと宮田さんのお力添えのもと車にて帯広空港から大樹町までと大樹町内のスポットをいくつか案内して頂きました。
後々本当に牧場だらけなのだと実感はするのですが、車窓から放牧されている牛たちやポニーを見る度に物珍しくてテンションが上がっていました。
案内してもらっているところで特に印象に残っているのは晩成の海と晩成温泉。昼間は天気がよかったのですが、午後になって霧が出てきて少し肌寒かったです。
海を見てびっくり。果てしなくなにもない、そして霧がかって先が見えない。白黒の海が広がっていました。
私は秋田の沿岸出身で実家は歩いて5分のところだったので海自体は珍しくもなく身近なものですが、北海道の海、本当にでかい!海しかない!遮るものがなにもない!
そして秋田では私の知る限りこんなふうに霧がかる海を見たことがないのでとても幻想的で、不思議な風景でした。
晴れた日に海を見に行くことはなかったけれど、晴れの日は晴れの日できっと美しいんだろうと思います。
大樹町についてほぼ調べずに来たのですが、お風呂は好きなので唯一晩成温泉は行きたいな!と思っていました。入浴料500円でフェイスタオル・バスタオルも貸してくれて手ぶらで行けるのがよかったです。
晩成温泉は熱めのヨード泉。
結構熱めで長く浸かることはしませんでしたが、湯冷めしにくいと言われているのがよくわかるくらいお風呂上がりのポカポカが続いて冷えた身体に嬉しかったです。
3日目(5/16)
私は特に行きたい場所など探していなかったので、とりあえずホームセンターに制作に必要なものを買いにいこうとDCMニコットまで歩きました。
ステイ住宅からは歩いて40分かからないくらい。自転車ならすぐだろうと思います。アーティストとしては大きめなホームセンターが近くにあるというのは心強いです。
さて、買うもの買って次はどうしようか。
町の方面に戻ってもよかったのですが、せっかくだからそのまままっすぐと歩いて見ることにしました。だだっ広い空と土地を見ながらいくつかの牧場を通り過ぎ、山の中へと突入。
どこに続いてるかよくわからないけど、熊も出るようなので日が暮れる前には町の方へ戻ろうと時間を決めてずんずん歩きました。
途中までは舗装された道路があったけど、途中から舗装されていない道が続きます。
大樹町にいる間、どこでもそうだとは思っていたのですが至る所から鳥の鳴き声がすごい。しかもいろんな種類の鳥の鳴き声がする。野鳥観察とか好きな人にもよさそう。
自然の音以外はほとんどせず、都会の暮らしでは周りの音をシャットアウトするために常にイヤホンをつけていますが大樹町では1度も音楽を聴くことがなかったです。
自然の音と自分の足音だけの世界がとても気持ちよかった。
行き当たりばったりで山に入ったので熊鈴も持っておらず、ここで熊に遭遇したら死んじゃうかも!それならいっそのこと綺麗に食べてくれ!と思いながら歩きました。
時刻は16時。
まだ割と辺りは明るく日が長くなったことを感じましたが、身を案じて道を引き返し無事に町へ戻りました。帰り道にcoopへ寄って食材を買い、ステイ住宅に戻って自炊をしてみんなで晩御飯を済ませてその日は終了。
いろいろと物思いにふけながら、あるいは頭の中を空っぽにしながら自然の中を散歩して、心が軽くなったように感じました。
4日目(5/17)
一緒にステイしている関戸さんと共に十勝バスに乗って大樹町から足をのばし六花亭アートヴィレッジ中札内美術村へ。
初日に隣の六花の森は散策したのですが、アートヴィレッジは土日祝のみ開館ということで再び行きました。
中札内美術村の敷地内にはいくつか小さな美術館(いわゆるギャラリーほどの大きさ)があり、それぞれ北海道・十勝に縁のあるアーティストの展示がされています。
洋画に日本画にイラスト、庭園には多くの彫刻もあり見応えがあります。
面白かったのが地方の小さな美術館というとその土地出身のアーティストばかり取り扱われてるイメージですが、ここに収蔵されているのは北海道外出身のアーティストがほとんどで、それほど北海道や十勝という土地に魅入られるアーティストが多いのだと感じました。
大樹町は特に移住してきた人が多いと聞きますが、このように昔から道外のアーティストが住み着いたり何度も訪れたりしているのを見ると外部の人間を受け入れる器が大きい土地なのかなーと想像しました。
帰りは更別の「ピッツェリア Tuka」にてピザを頂いて帰りました。
小さなお店ですが、店内は賑わっていてお店の外にも人が待っていて、自家製チーズを使ったピザが全然重くなくペロリといけて、人気なのもわかるお味でした。
5日目(5/18)
一応私は「滞在制作」の名のもとに、気合いいれてF30号キャンバスと簡易イーゼルを持ってきていたのでこの日は野外制作をしてみることに。
おおばさんも一緒に歴舟川の岸に降りてみました。
大樹町に来た時に歴舟川を橋の上から見てずっと岸に降りて絵を描きたいと思っていました。
この日は晴天、風は強い日でした。
野外にイーゼルを立てて制作するなんて何年ぶりでしょう。下手したら学生時代の課題が最後なので10年振りくらいかもしれません。風が強くて何度もキャンバスを倒してしまいましたが、自然光で輝く景色は美しく、肉眼で生の景色を見ながら絵の具で描くのは久しぶりで新鮮でした。
筆を洗ったり、絵の具を溶く水は川から汲ませてもらいましたが、透明で本当に綺麗な水。(排水はすぐ近くの公衆トイレで流させてもらいました。トイレが綺麗なのもありがたい!)
おおばさんも傍らでドローイングをしていて、2人でいろいろな話をしたりしなかったりして日光を浴び、ビールを飲んでいい時間を過ごしました。私のお気に入りスポットになりました。
この日の夜は、一緒にステイしている鳥本さんがたまたま知り合った、大樹町で羊牧場を営んでいる西川さんご夫婦に焼肉に招待していただきみんなでお邪魔しました。
大樹町には牛牧場はたくさんあるけれど、羊牧場は珍しいのだとか。
羊小屋も見せていただきました!飼育しているのは身体は白く、顔だけ黒いサフォーク種。「ひつじのショーンだ!」となりました。
子羊も何頭かいてあちらこちらを自由に歩いていて可愛かったです。
一緒にいたハンターの方に「これ見たあと食べられる?」と聞かれたけど、私は気にせず食べられる方です。こういうのを見ると、食も命だな〜と実感します。せっかくの命、美味しく頂くぞ!と気合十分でした。
お話を聞いて初めて知ったのですが、北海道のジンギスカンでさえ羊肉はほとんど輸入で国産の羊肉を食べられることはなかなか珍しいことなんだとか。癖も強くなくとても美味しくて貴重な体験でした。
ハンターの方もいろいろと話をしてくださって、酪農の話、狩猟の話、興味深いものでした。
私たちは今回アーティスト、言わば絵のプロとして来たようなものですが、ここには酪農のプロ、狩猟のプロ、はたまた大樹町では宇宙の研究をされてる方もいて、どこにいるプロの話も面白いと思いました。
夜遅くまで西川さんのところでたくさんお話をして、お腹いっぱいになるまでお肉を食べさせていただき、その節は本当にありがとうございました。
お土産に持たせてくれた羊肉のジャーキーは美味すぎて、少し残して東京にも持ち帰ってきました。
この話はこれからいろんな人に自慢すると思います。
6日目(5/19)
大樹町で丸1日滞在できる最後の日。
この日は夏日でとても暑い日でした。
この日も私はなにもやることを決めていなかったので、外で小さいキャンバスにでも絵を描くか!天気もいいし日高山脈見えるかな?と萠和山へと向かうことにしました。リュックに画材と昨晩西川さんにもらった羊肉ジャーキーを詰め、おおばさんから借りた熊鈴をつけて出発。
ステイ住宅からこれまた延々にまっすぐと歩いていきました。
一応長袖シャツとコーチジャケットを持って出てきたけど、この日は1日半袖で汗だくになりました。
往路は道路側から。
舗装された道と言えども、少し息が上がるくらいの坂を登っていきます。
歩くこと30分ちょい、「林道 萠和山線」の看板を発見。少し細い道に入ります。
ここでもまたいろんな鳥の声が聞こえます。
「カタカタカタ」みたいな鳴き声が聞こえてきたけどなんの鳥だろう。近くでいきなり鳥が羽ばたいたりしてびっくり。
ここらへんから熊鈴を鳴らして歩きました。熊に遭遇したら昨日ハンターさんに教えてもらった通りに手を上げて体を大きく見せるぞ!(私は小柄なので効果あるのかわからんけど)と思いながらもう少し歩きます。
舗装されていない駐車場を発見、ここらへんぽい!駐車場の奥に小花の咲く道が続いていたのでそちらに進みます。
予め展望台が撤去されているのは知っていましたが、元展望台跡地と思われる広場に到着!
思ったより木が生い茂っててあまり景色が見えない!
山の上から見るより、山の下から見る方が開けた景色が見えるなんて不思議な土地です。
山の上で絵を描こうかと思っていましたが、断念して復路は反対側の遊歩道から下山。帰り際に半田ファームに寄ってソフトクリームと飲むヨーグルトを頂きました。
日差しを浴びて火照った身体にちょうどよかったです。
そのままステイ住宅に戻るか悩んで、せっかく画材を背負って1日中歩いたんだしとこの日もまた歴舟川の岸に降りて絵を描きました。
足を川に浸すとひんやりとして気持ちよかったです。
最終日(5/20)
この日は一足先に大樹町を出る鳥本さんをお見送りし、残った関戸さんと協力隊の宮田さんとおおばさんと4人で和風イタリアンちょっとにてランチ。旬のアスパラを使ったパスタを頂きました。
その後はパティスリーナオヤヒロセに寄ってデザートにワッフルを購入し伯林公園を散歩。
最終日は曇ってて少し寒かったのが残念。
最後にお世話になった歴舟川を眺めて東京に戻ることとなりました。
行きはいろんなところに寄り道してもらったので気づかなかったけど、帰りも車で空港まで送ってもらい思ったよりも大樹町と帯広空港は近いことに驚きました。
あっという間の1週間でした。
割愛してしまいましたが、示し合わせたわけではなかったのですが一緒にステイしたメンバーで毎晩順番に晩御飯を自炊してみんなで食卓を囲み、昼間にどこを訪れていたか、普段の制作の話、アートの話、ドローイングを見せ合ったりして良い時間を過ごしました。
大樹町での個人的な経験もそうですが、北海道の大樹町という町で違うバックボーンを持ったアーティストが集まって初対面にして共同生活を送るという経験はなかなかないもので、刺激的で楽しく、勉強になりました。
このような機会をくださった大樹町に感謝です。
また大樹町を訪れた時には大樹町も、私もどうなってるか楽しみです。
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