子牛の哺育園があるなんて!町内の酪農家を支え続ける、株式会社J-Proコントラクトファーム
こんにちは!町民ライター&移住コーディネーターの岡山ひろみです。
宇宙のまち大樹町noteでは、新企画「大樹町のお仕事紹介」を始めます!
なぜ、お仕事の紹介をしていくかというと、移住地の就労先というのは、移住希望者の悩みのタネだからです。私も、東京から札幌にUターンするために転職先を探しましたが、なかなか働きたい仕事が見つからず、1年ほど東京でぐずぐずしていました。
でも、「仕事がない」なんておかしな話ですよね。だって、その町には沢山の人が生活していますから、仕事がないはずないのです。「仕事がない」のではなく、「仕事が知られていない(伝わっていない)」だけ。実際に、町にはおもしろく、魅力的な仕事がたくさんあるのです。
例えば酪農ひとつとっても、子牛から搾乳する大人の牛まで1000頭の牛を最新機械を導入しながら飼養している農家もいれば、近隣の子牛をまとめて哺育する農家もいたり、搾乳できなくなった廃牛を食べられるように加工して販売している農家もいたり…。また、搾乳を中心に仕事をする方もいれば、牛のエサである牧草を育てる農作業が中心の方もいたり、中には繁殖管理というお仕事もあります。
そこで、大樹町にたくさんある魅力的なお仕事を、宇宙のまち大樹町noteで紹介していくことにしました。
記念すべき第一回目では、株式会社J-Proコントラクトファームさんをご紹介いたします!J-Proコントラクトファームは、酪農事業だけではなく、「哺育預託事業」と「コントラ事業」という三本柱で牧場を経営している、少し珍しい農業法人です。
まるで子牛の保育園!近隣農家から子牛を預かり、育て、返すお仕事。
酪農家は成牛を妊娠・出産させて搾乳をしますが、搾乳牛だけが牧場にいるわけではありません。未経産牛も、妊娠中の牛も、搾乳牛が生んだ子牛もいます。
生まれたばかりの子牛は、人間の赤ちゃんと同様に体が弱いため、暖かな場所を用意したり、風邪を引かないように換気に気を使ったり…と、成牛に比べて非常に手がかかります。育て方を誤れば命を落としてしまったり、生後間もないときにかかってしまった病気のせいで搾乳量が少なく、廃棄せざるを得ないこともあるそうです。それくらい子牛の哺育は難しく、しかし、酪農においては大事なものです。
大規模な牧場では、子牛から搾乳牛まで育てているところもありますが、手間がかかる子牛の育成を、外部に委託する牧場もあります。J-Proコントラクトファームでは、近隣農家10軒から、生後10日以降の子牛を預かって、代わりに育てる哺育預託事業を行っています。
現在、哺育預託事事業における、子牛の飼養管理を務めている山嵜公平(やまさき こうへい)さんに、お話を伺いました!
ーどんなきっかけで入社されたか教えてください!
動物が好きで酪農に興味があったので、Twitterでいろんな牧場のアカウントをフォローしていました。そのアカウントの中に、J-Proコントラクトファームもありました。突然、J-Proコントラクトファームからフォローされて、「興味があったら見学に来ませんか?」とメッセージが来たんです。せっかくだからと思って、広島県から見学に行き、面白そうだと思ったので入社しました。
ー農業未経験でJ-Proコントラクトファームで働き始めたと聞きました。初めて酪農の仕事を始めたときは、どうでしたか?
もともと想像していたのは、牛のフンのニオイや、ハエがたくさんいる環境です。実際に牧場で働くと、ニオイも気にならず、虫も少なかったので驚きました。好き嫌いはあるかもしれませんが、私は動物が大好きなので、楽しく仕事をしています。
酪農は朝が早いので、最初は起きれるか不安でしたが、慣れれば特に苦もありません。それに、前職では昼食をとる時間もなかったのですが、三食しっかり食べられることに感動したくらいです。たまに一緒に働いている仲間たちと食事に行ったりするなど、アットホームな職場の雰囲気です。現在、社員寮に住んでいますが、新しい建物ということもあり快適です。
ー哺育預託事業は他の農家さんの子牛を預かって育てる仕事ですが、心がけていることはありますか?
「他の農家さんの牛だから」と特別扱いはせず、命を扱う仕事として、油断せずしっかりとやらなきゃいけないと思っています。
ただ、酪農未経験で入社したので牛に関する知識は一切なく、最初は体調が悪い牛を見分けられず苦労しました。やりながら覚えるしかないのですが、最近は担当している箇所の牛の調子が悪いとすぐに気がつくようになりました。
ーやっぱり、酪農のスタッフとして1人で仕事できるようになるには、時間がかかるんでしょうか?
作業自体は意外とすぐに1人でできるようになるんです。もちろん分からないことがあれば、LINEですぐに聞いてすぐに対応するようにしています。それに、農場HACCP(※)の取得がきっかけで仕事内容をマニュアル化したので、これから新たに入社する人にもわかりやすくなっていると思います。
ーこの仕事のやりがいはどんなところでしょうか?
哺育預託事業なので、預かっている牛を6ヶ月ほど育てた後は必ず返さなくてはいけません。そのときに、元気に帰っていく姿を見ることができると、あんなに小さかった子たちがこんなに大きくなったんだなぁ…と思うことです。
ー最後に、酪農に興味がある方にメッセージをお願いします。
仕事って、やってみないと自分に合っているか分からないので、とりあえずJ-Proコントラクトファームまで来て、やってみたらいいんじゃないかなと思います。それくらい行動できる力があったら、こっちでもやっていけると思いますね。
現在、J-Proコントラクトファームでは、10軒の農家から、約650頭ほど牛を預かって育てています。子牛飼養スタッフの仕事は、子牛の哺乳や朝夕の搾乳、機械を使った餌作り、除糞などの牛舎の掃除があります。
1日の仕事の流れ
近隣農家の畑作のお手伝い!?コントラ事業
実は、大規模な酪農では牛を飼って搾乳するだけではなく、牛のエサとなる牧草やデントコーンも作っています。春には畑作りをし種を撒き、6月から秋までは牧草の収穫、秋にはデントコーンの収穫をし、畑おこしなど…季節に沿って畑作業をしながらの、牛の飼育なのです。
少子高齢化の影響もあり、どの農家も慢性的な人手不足。J-Proコントラクトファームでは、大樹町内の酪農家へ赴き、牧草の収穫や畑作のお手伝いをすることで、町内の農業へ貢献しています。
1日の仕事の流れ
この様に、子牛の哺育預託事業も、畑作を手伝うコントラ事業も、どちらも他の農家の役に立つこと。J-Proコントラクトファームは、酪農牧場としては珍しく、搾乳がメインではなく、哺育預託とコントラ事業がメインの会社です。それは、前代表取締役の山下博さんの強い意志が反映されています。
「地域になくてはならない牧場になろう」
J-Proコントラクトファームの歴史は、前代表取締役の山下博さんと、妻であり現代表取締役の山下展子さんが、博さんのご両親が行っていた酪農を継ぐために就農した1991年からスタートします。2004年には、日本酪農青年研究連盟主催の日本酪農研究会にて、最優秀賞にあたる「黒澤賞」を受賞。その翌年には哺育センターを立ち上げました。
実は、哺育センターは農業改良普及所から打診を受けたことがきっかけでした。子牛の哺育は難しく、手を取られるので誰もやりたくないこと。その当時の大樹町では、いくつかの農家が集まって法人化する動きがありました。博さんは、哺育センターがこれから絶対に大樹町で必要になると考え、請け負うことを決めたという経緯がありました。その時、博さんと展子さんで話したのは、「個人の牧場ではあるけれど、哺育預託をやるからには、地域になくてはならない牧場になろう、そうでありたい」ということ。
そんな想いから、7年後にコントラ事業を開始し、2013年に株式会社J-Proコントラクトファームとして法人化しました。
順調だったのもつかの間、2020年に博さんが急逝してしまったのでした。そこからは、悲しみに暮れている間もなく展子さんの奮闘が始まります。2人でやっていた会社を1人で経営するだけでも大変なのに、哺育預託事業では、子牛を預かっている牛舎でヨーネ病とサルモネラ菌が発生してしまい、その対応と対策に追われます。展子さんは、博さんが急逝してから現在までの2年間を「試練のようだった」と表現していました。
会社をたたむことも考えたそうです。しかし、それを引き止めたのは、「地域になくてはならない牧場になろう」という博さんとの誓い。親の牧場を継いだあとに法人化したのも、自分の子供たちに継がせるのではなく、やる気のある人に会社を続けてもらいたいと思ったから。その言葉を思い出し、会社を続けようと思ったそうです。
ようやく会社を立て直し、再び軌道に乗り始めた現在。代表取締役を務める展子さんと、専務取締役の杉村満さんの他に5名のスタッフで、搾乳牛30頭、育成牛20頭を育て、哺育預託事業で650頭の牛を預かっています。そんなJ-Proコントラクトファームは、展子さんと共に哺育預託事業で活躍してくれるスタッフを募集中です。
仕事内容は哺育預託事業で預かっている子牛のお世話で、哺乳をしたり、機械を使って餌作りや除糞などの牛舎掃除などを行います。加えて、J-Proコントラクトファームで飼養している牛約30頭の搾乳も。
建てられたばかりの単身者向けの社員寮があり、希望者は毎月15,000円で住むことが可能です。最低限の家具家電もあり、エアコンもついています。
代表取締役 山下展子さんより
私たちは酪農の基盤を担う位置を任されています。乳牛は乳を搾ってこそ生活が成り立ちます。しかし、そこに至るまでの牛づくりは優良な餌作り、優良な土作りから始まっています。全ては土から生まれ、土へ還る。
コントラ事業を請け負うというのも繋がりはとても重要なことです。
生き物と向き合うとき、どうしても逃れられないのが「病気、生と死」どんなに努力しても運命を変えられるほど私たちは神様にはなれない。でも、ほんの少しの気遣いや思いやりを持っていたなら、どんな生き物にも愛情はかけられる。
「J-Proコントラクトファームに預けて良かった」と言ってもらえるように。いつでも相手の気持ちに寄り添える立場で在りたい。
哺育センター、コントラに加え、搾乳を営農し続けているのはそんな想いからでもあります。
いっときの子牛を育てているというよりも、その子牛の一生を育てて見送るということ。
とても大切にしていたい部分です。
授精して産まれた子牛を一緒に育てませんか?こんなふうに命の成り立ちを雄大な自然の中でゆっくりと見つめること、してみませんか?
あなたを必要とする牛たちが待っています。